慢性疲労症候群

 

慢性疲労症候群とは、客観的な身体的異常が認められず、また過労によるわけでもない状況で、日常生活を送れないほど重度の疲労感が6カ月以上続く状態をいい、その原因は分かっていません。

 

多くの場合、ストレスとなる出来事の後に突然発症します。発症前には問題なく日常生活が送れており、身体的にも異常のない場合がほとんどです。

 

 

症状

 

・朝起きたときからひどい疲労を感じ、それが1日中続く。

・睡眠休息しても軽減されることのない疲労が続く。

・身体活動や精神的ストレスに比例して症状が悪化する。

・集中力が低下し、しばしば思考困難をともなう。

・抑うつ症状がみられる。

・起立時に頭のふらつきやめまいを感じ、横になると治まる。

・ウイルス感染症様の症状がある時か、その後に極度の疲労が生じ、発熱、鼻水、リンパ節の痛みや圧痛が伴う。

 

 

西洋医学による治療

 

慢性疲労症候群における具体的な症状である抑うつ、睡眠、痛みに対する薬の投与が通常行われる治療となります。

慢性的な疲労自体を緩和のため、抗うつ薬やコルチコステロイドなどが処方される場合もあります。

 

しかし、慢性疲労症候群が原因不明の疾患とされる以上、薬の投与はあくまで症状を抑制するためのものであり、根本的な治癒には至り難いのが実際であると言えます。

 

さらに精神療法としての認知行動療法、あるいは疲労感の改善、身体機能向上を目的とした有酸素運動を中心としたリハビリテーションが行われる場合もあります。

 

いずれの治療法も少数の患者に改善がみられるものの、患者全員に明らかに有効な治療法は確立されていません。

 

症状は多くの場合、時間の経過につれて軽減していくものの、消失するまでには何年もの年数がかかることが多く、またすべての症状が消失するわけでもないとされます。

 

 

鍼灸治療適応の場合

 

慢性疲労症候群は確定できる臨床検査はありません。

 

よく似た症状を引き起こす可能性のある他の疾患を検査により否定することで、慢性疲労症候群の診断が医師により下されることになります。

 

他の疾患でなく、慢性疲労症候群であることが確定している場合、鍼灸治療による改善を見込むことができます。

 

 

当院での施術

 

慢性疲労症候群とされる方の多くはアレルギー疾患の既往があり、免疫システムに軽微な異常を有する可能性があります。

 

免疫の低下はたいてい腹部の冷えや気虚(気の減退)として現れており、ウイルスをはじめとする外邪がその弱点である腹部まで侵入しやすい状態となっています。

 

特に症状の悪化時においてウイルス感染様の症状がみられることが指摘されていますが、東洋医学においてそうした外邪は多くの場合、後頭部から項(うなじ)、肩背部までの表位から侵入するとされます。

 

表位から侵入した外邪は、やがて咽喉部、胸部、上腹部を通り、最後に下腹部へと至ります。そうした外邪の侵入を許してしまうのが、腹部の冷えや気虚という事になります。

 

慢性疲労症候群の方は体内の免疫システムの極度な低下に陥っていると考えられますので、要はその免疫機能をいかに回復させるかといった面からアプローチすることになります。

 

よって当院の鍼灸治療では、まずお灸により腹部の冷えと気虚を補い、また表位にある邪熱を鍼により取り除くことが基本的な施術方針となります。

 

こうして鍼灸治療を通して腹部の弱点を補うことは、ウイルスをはじめとした外邪の侵入を防ぐことに繋がり、免疫調節異常から回復する有効な手立てとなります。

 

免疫系統の回復はそのまま身体的ストレスや精神的ストレスの軽減にもつながり、慢性疲労症候群の段階的な緩和を期待することができます。